間違いなく語弊を招く題名だけど、トレイルランが嫌いなわけじゃない。ただ、本当にトレイルランをするランナー達のマナーが悪すぎるので学んでほしいのだ。ここ数年悶々としてきたが親しい人に言ってみることはあっても、知り合いぐらいの人に言うのは軋轢を生むだけだしなという思いだった。というか、いわゆるスポーツマンなので良い人柄の方達が多いと思っている。ただ、最近になって山小屋の人たちや、山岳レスキューの人たちと話す機会があり、少なからず同じような思いを持っている人たちがいると知り、少しでも発信できるようここに記してみる。とはいえ、この話は今回だけで終わり。これ以上引きずらない。その分ちゃんと書く。
元々自分は登山しかやっていなくて、2014年ぐらいのトレランが普及しだした頃にテレビとかでもマナーが悪いと話題になり、ふ~んと思いつつも、さてやりもしないで文句ばかり言うのもどうなんだろうという思いから、自分も始めてみたのである。20kmぐらいの大会から始めて100mileの大会も3回ほど参加。2回は完走して、1回は降雪で130kmでレースがキャンセルされると言うレベルぐらいにはなったので、それなりに一通りの経験はしたと思う。
結果、競技としての魅力も楽しみも十分にあることは理解したし、そして残念なことであるけれどテレビでも言われていたマナーの悪さというのは大部分の人が当てはまるなあという結論となった。じゃあマナーの悪さって何なのって言うと、難しいのだけれどやっぱり山の文化を作ってきたのは登山者で、彼らがこれまで築いてきた常識と照らし合わせて、そこから外れることと言っても過言ではないのではなかろうか。
そうなると、これが起こる原因はどこから来るのだろうかという話になるわけだが、結局のところ上級者から初心者まで山自体に興味がある人間が圧倒的に少ないからだろう。この上級者ですらというのが問題で、いわゆる教えてくれる先輩が山の常識を知らないということだ。そこから教わる初心者も、当然知らないまま成長し、負の連鎖につながっていくわけである。いやいや、私山好きだからロードよりもトレイルやってるんだよ。って言う方もいるだろうけど、考えてほしい。一度でも山自体に興味を持って、その山に行くために1から情報収集して山行計画を時間含めて「きちんと」自分で立てて、実行したことがあるだろうか。ほかの人が走ったトレランコースの一つを選んだだけだったり誰かについていっただけではないだろうか。それはつまり、山を好きなのではなくて走ることが好きでその延長で、山の中で走ることが好きなのだと思う。
まず、実体験からいくつか例を出してみよう
最初に紹介するこれらは明らかにひどい例で、ほとんどのトレイルランナーがこうだとは思っていない。でも、少なくとも数%のレベルで実際にいる人たちである。
サンダルで登る人たち
農鳥と北岳からの帰り広河原に車を止めていたので、当然北沢峠からバスで行くのだけど、そのバスの中で運転手のおっちゃんが笑い話で話してくれた内容。「外国人登山者がサンダルで登るっていうもんだからさ、みんなで止めたんだよ。そしたら、落ちても痛いの自分だから大丈夫っていうんだよね。どうしても聞いてくれないから警察呼んで、警察が捕まえるぞと言ってやっと説得できたんだけど」
もう、全く笑えない。なぜかというと奇しくも、その日北岳からの下山道で「サンダル」で駆け下りて来て、狭い道なのに走って横を無理やり抜いていったトレイルランナーを目撃している。ついでにむき出しの踵は血を流し真っ赤に染まっている。そのサンダルで北岳のガレを走れば、高確率でそうなるよね。
別の日に、これも今年だが赤石と硫黄の間を縦走しているときに「ワラーチ」を履いてるトレイルランナーが前を歩いており、当然だが、ガレ場ではズルズル滑る足で必死に登っていた。石を落としながら登るし、このときは流石に注意した。この山域で、その靴はだめでしょうと。20は軽く年上のようだったが一言も言葉を返されることなく・・・その後も登っていた。
この話って登山だとかトレランだとか以前である。一般常識的に考えても、あってはいけない話というのはバスのおっちゃんの話に対して、そのバスに乗っていたみんなが笑っていたことが証明している。岩もゴロゴロしている山でむき出しの足。ワラーチの人たちはソールはVibramだからとか言うのだろうけど、Vibramでも色々あるけど、登山用のソールですか?登山用だったら硬すぎてまともに走れないけどね。
登山者を押しのけんばかりに走って抜く人たち
トレランルールで周知されているはずのの一つ、登山で気を付けましょうの常識として登山者を見かけたら視界に入った時点で歩く。そのまま歩いて抜いたらまた視界から消えるまで走ってはいけないというものだ。視界だと定義があいまいなので数mでよいと個人的には思うが、これ守れているトレイルランナーの少なさには絶句レベルである。高尾山でよく見かけるのは、まあトレラン初心者が多いからしかたないと思っていた。が、最近アルプスに多くなってきたランナーすら、平気でこれをやる。日本の狭いトレイルで走ってすれ違うということは、当然体が触れてしまうこともあるだろう。アルプスには落ちたら即さよならコースのがけも多々ある。彼らは重いものを持って山に入ったことがないから、少しバランス崩しただけでも致命傷になりかねない事が想像つかないのだろう。がれ場の山側にいるときでも走っておりてくるので石を崩しながら非常に危険な状態を作っている。さらに、それを見ていても気にならないのだろうか、そのまま降りてくるのである。
ここからは、割と一般的なトレイルランナーでもあるなあという話
もちこまない、もちださない
国内でもトップ選手のとある投稿に鹿の角見つけた持って帰って、薬にするんだと。その投稿へのコメントは「すごいね~」とか「自分も見つけたい」とか賞賛の雨嵐。 コミュニティが山の人ではないからなのか、全く 否定的なコメントは有りませんでした。さて、そんな私も初心者のころ鹿の頭蓋骨を見つけて頭に乗せて持って帰ろうとしたことがあります。当然ですが一緒にいた先輩にこっぴどく怒られました。非常識を非常識と言ってくれる人がいないという環境はとても不幸です。
UTMFの装備があればアルプスに来て大丈夫?
あれってあくまでもレース前提の最低限装備、そしてあの大会は時期が早いとはいえ、せいぜい2000m行かない程度の装備ですよ。そんなんでアルプスに突入することがどういうことか・・・北アルプスに前後の小屋がコースタイムで7時間離れているところがあります。ついでに崖の連続なので走ろうと思って走れるところではありません。そこで見かけたトレランの人、ガスっていて見えづらいはずなのにサングラスをかけたまま、半袖半ズボン、ザックは精々5L程度なもので薄いジャケット程度しか入らないでしょう。崖登りの連続するがれ場なのに底の薄いトレランシューズ。危険な装備であること、その装備だと場違いこの上ないことに気がついてください・・・あっそうそう登山靴とトレランシューズの大きな違いの一つはソールの硬さです。とくにがれ場では岩角などの一点にしか接地していなくても足裏全体を支えてくれるので不安定になりにくいです。
そんな無理な山行計画たてちゃうの?
これも割とありがちな気がします。計画の段階で平気で20時間のプランを連日立てちゃう。それをアルプスでやってしまうと少しでも条件が狂えば途端に破綻するということが想像できないのでしょうか。できないですよね。だってゴールすれば終わり、何かあったら運営に連絡すればいい大会しか知らないのだから。
そこ、コースじゃないですよ
鳳凰三山を登っているときのこと、登山者が邪魔なのか登山道を大きく外れて走る人たちがいる。確かに、山頂付近でなだらかなので、通ろうとすれば通れる場所だが、そこはトレイルではない。行けそうだから行ってみた、そういう軽い気持ちだと思う。ただ、あなたの足元には高山にしか咲かない貴重な高原植物が踏みしめられていることに気がついてほしい。登山道があるというのはそういう面もあるのだ。
結論はトレイルランナーのマナーは登山者から見れば、どう見ても悪い。ただ、自分もトレランやった身として、たくさんの人と知り合った中で全ての人が悪気があってやっているわけではないのも分かっている。だからこそ、彼らには普通の登山も経験してほしい。そうすれば自ずと何に気を付けなければいけないかわかってくるはずだ。当然であるが、登山初心者の人たちだって同じように非常識からスタートして少しずつ学んでいくのだ。私だって例外なく非常識なことをして窘められている。幸いにも近くに先達の方がいたので実行に移すことなく済むこともあったが、分かっている先輩がいないトレイルランナーのコミュニティでは、これらは学ぶことはできない。登山者もトレイルランナーも山の恵みを享受し、堪能したいという思いは同じなのだろうから。
こんなこと偉そうに言える立場とは本当は思ってません。自分だって未だに、あの時やってしまったあれはまずかったと反省することは尽きない・・・
ただ、登山者目線でトレランをそこそこやっている人って少ないと思います。その目線で見た素直な感想がここに記した内容です。知らないからでは済まないときはいつか来ます。トレイルランナーにアルプス来るなというわけではないのです。破綻のない計画をたて、装備もしっかりし、山での常識を学んでほしい。少しでも、この気持が伝わればという思いです。